翻訳の仕事にはビジネス文書、マニュアル、本など様々な種類がありますが、中でもウェブアプリやスマホアプリのUIのローカライズは少し特殊です。
UIとはユーザー・インターフェースのことで、アプリを操作するために必要な、画面上に出てくる文字やボタンを指します。
具体的には管理画面のメニュー、ステータス表示、ダイアログメッセージなどを思い浮かべてみてください。
普通の文書の翻訳であれば、内容が文書の中で完結しているので、文書を最初から最後まで読めば文脈が理解できます。
しかしこうしたUIのテキストは、一つ一つがぶつ切りのテキストなので、テキストだけを見て翻訳しても前後の意味を掴むのは難しいです。その結果、状況にそぐわない翻訳になってしまうことがあります。
そのため、UIの翻訳では実際の画面を見ながら翻訳するのが不可欠になります。
もし貴方がUIを翻訳しようとしていて、テキストが羅列されたエクセルしか貰っていなければ、実際にアプリをプレイできるかどうかリクエストしてみましょう。
アプリが開発中だったり様々な理由で入手できない場合は、キャプチャや画面仕様書だけでも見せてもらえないか頼んでみましょう。
アプリのUIでは、単語を組み合わせてシステム的に文章を表示している場合があります。例えば、何かの言葉を入力して検索をかけた時の結果画面でよくある文言
Search results for {入力テキスト}
{入力テキスト}の部分はユーザーが入力した内容に応じて変わるようになっています。日本語に訳すなら
{入力テキスト} の検索結果を表示
としたいところですよね。
しかし”Search results for”と”{検索テキスト}”はこの並び順で表示するようプログラムされており、日本語にする際この順番を変えるには、プログラムを弄らなくてはなりません。そうなるとエンジニアの工数が発生しますし、日本語表示だけテキストの順番を変えるという手間は避けたいところです。
ここは、
次の検索結果を表示: {入力テキスト}
こうすればプログラムを変えなくても済みます。
ちなみにこの並び順を意識せずに訳すと、
の検索結果を表示 {入力テキスト}
という文が誕生してしまいます。UIの誤訳でよくあるパターンですね。
だからこそ、前項で述べたように実際の画面を見て、どんな場面で使われるテキストなのか理解することが大切です。
次は、ウェブサイトやアプリの翻訳を依頼する場合に成功させるコツをお伝えします。
翻訳者に情報を渡す時のコツです。
UIの翻訳では、テキストをエクセルやSpreadsheetに入れて翻訳者に渡すことが多いのですが、その際にテキスト以外の情報も添えておきましょう。
❌悪い例:
日本語 | 英語 |
---|---|
ホーム | Home |
ストアを検索 | Search the store |
プロフィールを表示 | |
プロフィールを編集 | |
ログアウト | |
新着 |
🟢良い例:
などの情報があると翻訳者が目的を理解できます。
↓適切な翻訳をしてもらうには、このような情報があると分かりやすいです。
画面: トップページ
位置 | 種類 | 日本語 | 英語 |
---|---|---|---|
ヘッダー | ボタン | ホーム | Home |
ヘッダー | 入力ボックス | ストアを検索 | Search the store |
ヘッダー | ドロップダウン | プロフィールを表示 | |
ヘッダー | ドロップダウン | プロフィールを編集 | |
ヘッダー | ドロップダウン | ログアウト | |
メインコンテンツ | ヘッドライン | 新着 |
UIの翻訳は普通の文書と違って特殊なため、アプリのローカライズが得意な会社に依頼するのが良いでしょう。
アプリのローカライズでは
という手順を踏んでいくことになりますが、ローカライズのできる開発会社に依頼すれば、上記を同時にやってもらえるのでスムーズです。
翻訳部分のみ依頼する場合でも、得意な会社に依頼するに越したことはないです。
個人の翻訳者に依頼する場合でも、普段からネットやアプリを使い慣れている方や、技術的な知識を持っている方にお願いするのが確実です。
翻訳者は次の点に注意して翻訳しましょう
依頼者は次を心がけましょう