翻訳とローカライズの違いってなに? アニメ・漫画・ゲームの場合

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翻訳に関連して、「ローカライズ」という言葉を聞いたことはありませんか? 「翻訳は分かるけどローカライズってなに?」と思った人も少なくないのではないでしょうか。

ネット業界やエンタメ業界では、しばしば「ローカライズ」という言葉が出てきます。実は、アニメ・漫画・ゲームなどのコンテンツを海外輸出または輸入するときは、翻訳ではなくローカライズが行われていることがほとんどです。

ローカライズとは

翻訳とは、原文の意味を保ったまま別の言葉に変えることを言います。英語のテストでやる和訳・英訳は翻訳に近いです。

一方ローカライズは「現地化」とも言います。コンテンツを、現地の人が自然に理解できる形に変換することです。

ローカライズという仕事は幅広く、たとえば以下の仕事が含まれます。

  • テキストの翻訳
  • 現地に馴染みがない言い回しの言い換え
  • 現地に存在しない概念を、現地の人が知っている別の似た概念に置き換える
  • 現地でタブーとされている、または好まれない表現の差し替え

ローカライズの仕事の中に、翻訳も含まれているんです。また翻訳はテキストだけの話ですが、ローカライズというとデザインの変更、仕様の変更などテキスト以外の話も含まれます。

ローカライズの目的は、受け手の頭に「???」を作らせないことだと言っていいかも知れません。聞き覚えのない言い回しが出てくると、一瞬立ち止まって考えてしまって、ストーリーを楽しむ流れが止まってしまいます。作り手としても望ましくありません。

ローカライズする場合は、考えないと理解できなかったり、解説がないと分からない表現は除きます。

翻訳の間違い?

台詞そのものを変えることもあるので、ローカライズされた文章と原文が全く違うことに気付いて「翻訳が間違ってるのでは?」と指摘する人も見受けられます。これはその人が「ローカライズ」と「翻訳」を混同しているのが原因でしょう。

翻訳(あるいは英語のテスト)では間違いでも、ローカライズでは正解だったりします。

ローカライズの例

現地に存在しない概念を、現地の人が知っている別の似た概念に置き換える

日本のアニメ・漫画・ゲームでは、他国に存在しない概念もよく出てきます。

想像上の動物「龍」→「Dragon」など、西洋に存在しない生き物は、西洋に存在する生き物に置き換えられています。(東洋の龍と西洋のDragonは違う生き物です)

「鬼滅の刃」に出てくる「鬼」は日本独特の概念なので、英語には直接対応する言葉がありません。英語では「Demon」と訳されています。

一方「NARUTO」に出てくる「忍者」は海外でも認知度が高いので、英語でも「Ninja」です。

現地でタブーとされている、または好まれない表現の差し替え

たとえばナチ党のシンボルであるハーケンクロイツや、それと間違えられそうな紛らわしいモチーフは、外国にローカライズする際は避けた方が良いでしょう。

逆に海外ではたまに見かける、原爆を想起させるキノコ雲のモチーフなどは、日本向けにローカライズする際は使わない方が良いでしょう。どうしても必要な場合は、相当慎重に使う必要があります。

ちょっとしたポイントなど

ローカライズをどこまでするか?

分かりやすさを重視して全てをローカライズしてしまうと、原作の良さが損なわれる可能性もあります。世界観が和風なのに単語や言い回しが西洋風だったりすると、違和感を与える場合もあります。

NARUTOのは、多くの国でそのままJutsuと訳されています。

このあたりのさじ加減は担当者のセンス次第です。ローカライズに正解はありません。

意味だけでなくカッコ良さも意識して

アニメ・漫画・ゲームでは、何かしらの技を使う場面がよく出てきます。技の名前を訳すときは、意味を忠実に訳すだけでなく、口に出した時のリズムの良さや響きのカッコ良さも重要です。

NARUTOの「多重影分身の術」を六カ国語で比較した動画がありました↓

英語では「Multi shadow clone jutsu」です。

イタリア語、長い(笑)。

他の技はどうでしょうか。

火遁・水遁など → 「Fire Style」「Water Style」

火遁・豪火球の術 → Fire Style Fireball Jutsu

鬼滅の刃だと

全集中 → Total Concentration

水の呼吸 弐ノ型 水車 → Water Breathing Second Form Water Wheel

こちらも正解はなく、センスの見せ所です。

おわりに

翻訳とローカライズの違いを意識して使い分けるのはとても重要で、翻訳者を雇ったとして「翻訳をお願いします」というのと「ローカライズをお願いします」というのでは、多分出てくる結果が違います。

これを機にさっそく今日から使っていきましょう。


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執筆者

Yulius

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