個人でゲームを開発するときにマーケティングを意識する人はあまりいないかも知れない。そもそもインディーゲームに特化したノウハウがあまり知られていない。
作りたいものを趣味で作っていて採算度外視なら意識しなくていい。しかし、これで食べていきたいならマーケティングは必須になる。
インディーゲームが活発な海外ではデータに基づくノウハウがシェアされている。これらを参考に、覚えておきたいポイントをまとめる。
ちなみに記事のタイトルではPCゲームと言っているが、PCゲームのプラットフォームはSteam一強状態なので、PCゲームを売る=Steamで売るという前提で書いている。
マーケティングとは、商品を潜在的に欲しがっている人達に届けることだ。一般にマーケティングというと広告宣伝のようなプロモーション活動を思い浮かべるかも知れないが、それだけではない。そのゲームを欲しがっている人が、どこに何人くらいいるか調べることも含まれる。
何を作るか。誰に売るか。売り先の市場を決めるのがマーケティングの第一歩だ。
市場(ゲーマー)に求められていないものを作ってしまった場合、どんなにハイクオリティでもどんなにお金をかけたプロモーションをしても、成功の可能性は限りなく低い。
誰に向けて何を作るかは成功(売上)の大部分を左右するので、慎重に決めたい。
どんなにマーケティングを頑張っても、ゲームのポテンシャル以上に売ることはできない。マーケティングが成功するためには、まず良い作品を作る必要がある。インディーゲームなら、開発95%・マーケティング5%くらいのリソース配分でいいと思う。
ゲームの場合、作るジャンルを決めれば、必然的に誰に何を売るかが決まってくる。
Chris Zukowski氏の動画「The 3 Things That Actually Impact How Well Your Game Sells」によると、ジャンルの決定は売上を決める3要素のうちの一つだ。
成功の分かれ目はそのジャンルの人気が高い・低い、競合が多い・少ないによって変わり、人気があっても供給過多になっているジャンルでは成功の可能性が低くなる。
Chris Zukowski氏はそうした需要と供給のバランスを踏まえた上で、売れやすいジャンルを紹介している。以下に一例をまとめた。
逆に売るのが難しいジャンルは
ゲームの売上にグラフィックが重要なのはよく知られている。ジャンルが決まったら、そのジャンルのユーザー層が好むグラフィックスタイルにする。ハイクオリティで制作しよう。
グラフィックの種類によって開発方法も変わってくるため、開発に着手する前に決めておくべきだ。
ちなみに前述の動画によると、ピクセルアートのゲームは需要が低く非常に売るのが難しい。趣味で作るならともかく、収益を得たいなら避けるべきだろう。
作るものが決まったら、次はゲームを知ってもらうためのアクションになる。マーケティングとして一般に語られるのもこの辺りだ。
プロモーションのゴールは、Steamのウィッシュリストを獲得することだ。聞いたことがあるかも知れないがSteamのウィッシュリストは非常に重要だ。ウィッシュリストユーザーはカスタマージャーニーの中でゲームの購入に一番近い人達だから。
SNS投稿、プレスリリース、実況など色々あるが、Chris Zukowski氏は86件のゲームのウィッシュリストデータから、どの施策が実際に効果があったかを集計した。
その結果一番ウィッシュリストを獲得したのはオンラインイベントへの参加、次が実況者で、一番獲得しなかったのはTwitterだった。
ちなみにこれは海外での結果なので、日本だと少し事情が異なるかも知れない。
日本ではプレスリリースの配信も1位か2位に来るくらい効果的なので、ぜひやるべきである。
SNSのオーガニック投稿(広告ではない投稿)は性質上そもそも新規プロモーションに向いていないので、必須ではない。ただしRedditへの投稿はぜひやった方がいい。
これを踏まえると、見込み顧客獲得のために優先してやるべきは、
他にも広告という手段があり、正しく使えば非常に効果的だ。しかし知識がないまま闇雲にやってしまうと、お金を湯水に流すだけになってしまうので、積極的には勧めない。
広告はとても奥が深いので、別の機会に詳しくまとめたい。
初めに書いたように、マーケティングはゲーム開発を始める前から考えよう。
開発中はゲームを知ってもらうための施策を随時打とう。
そして、ゲームのリリース日までに全ての販促活動を終わらせるようにスケジュールを組む。リリースしてから慌ててプレスリリースなど打ってももう遅い。
ゲームのリリース後にできることはあまりない。リリース後は、それまでに撒いたマーケティングの種が芽吹くかどうかを見守るだけだ。